MENU
JP EN

ナレッジシェア Knowledge Share

GAPをすることの農業経営上の意義、メリットを考える①

2018年2月16日日本橋にて、農業経営支援連絡協議会発足記念シンポジウム「GAPをすることの農業経営上の意義、メリットを考える」が開催され、出席してきた。

近年、農業関係者や流通業者間において農産物の品質を維持するための基準として認知され始め、ロンドンオリンピックの食材調達基準として注目され、日本においてもその普及及び浸透が図られている。

いわば農業のISO版のようなものだが、実際にJGAP(日本版GAP)の指導員資格を保有する小生も現場の農業法人とともに取得に向けた取り組みをしているが、基準の項目の多さはもちろん、その維持にもかなり労力を要する。

今回はGAPの中身や基準についてではなく、本タイトル通り農業経営上のメリットを弊社が運営する農業法人で適用した場合、また集荷先の農家へ取得を推進することにあたっての意義そしてメリットを考察してみたいと思う。

■ GAP取得の農業経営上の意義

本シンポジウムの講演にて主にのべられていたのは「農業の持続性」である。普段私たちが都市部で生活していればあまり気づかないが、農業は私たちの食生活の基盤だけではなく、自然環境に対しても大きな影響を及ぼしている。日本の田園風景はただきれいなだけではなく、春、夏と田んぼの水を維持することにより、気温の調節にも貢献している。さらに近年は観光資源としても注目されている。食糧生産というだけではなく、自然環境の維持や住生活者の生活基盤ともなっている。

しかし今この日本の農業が持続不可能に近い危機にさらされている。今のままでは農業も農業を維持している農家も同じ方法では続けていくことができないのだ。つまり縮小していく。農家数、農業生産量、生産額、農業インフラ、地方の生活基盤、観光資源… これらが少しずつではあるが、しかし確実に減少していく。主な原因は少子高齢化による人口減少、それに伴う地方経済の沈下ではあるが、都市部に生活しているとこれらの現象に対して実感がわかない。むしろ一般消費者にとってはイメージすらわかないのかもしれない。10年後、20年後は日本の農業は大きく変わっているはずだ。農業従事者の平均年齢が70代ということを考えれば、自ずと分かる結果である。その時日本は、足りない食品の多くを今までのように輸入で賄っていくことができるのだろうか?

今日本の農業経営者に求められているものはますます高度化している。大規模農場運営に複数の従業員のマネジメント。生産計画から販売計画に至るまでの経営戦略。資金調達、設備投資、リスク管理等、過去30年農業経営者が経営してきたことが参考にならないほど複雑かつ、新しい発想が求められるている。

そのような中で上述のように大きく変化するマクロ環境に対してどのように自分たちの農業経営を持続させていくのか?

持続的な農業≒環境保全型農業というイメージが日本には多いが、持続性は環境のみに対するものだけではない。農業に従事する経営体の維持、農薬使用等に従業員の健康維持、さらには消費者へ提供する際の安全対策も考慮されなければならない。自然環境の維持はあくまでも農業生産するための外部要因であって内部要因にも目を向けなければならない。

これらを網羅的かつ効率的に行うための枠組みの一つとしてGAP制度がある。

日本GAP協会では以下の4つの項目をGAPの目的意義としている。

  1. 食の安全の確保
  2. 環境保全型農業の取り組み
  3. 農業生産者の労働安全の確保
  4. 効率な農業管理体制の実現

参考サイト 日本GAP協会HP http://jgap.jp/navi_01/index.html

まさにこれからの日本の農業経営体が生き残っていく(持続していく)ために必要な項目である。

では、これらGAP制度の目的を踏まえ、GAP基準を導入することによる農業経営上のメリットはなんであろうか?

シンポジウムでは、小売業者、卸売業者、一般消費者の視点で多くが語られていたが、上記4つのポイントを農業経営者の視点で考察してみたい。

① 食の安全の確保=品質維持、管理、トレサビリティ提供による信用の確保向上

農産物、食品に関わる事業者にとって安全性は経営課題の1丁目1番地である。生産する農産物が安全でなければ、行政上の処分を受け、消費者が離れ、売上が低下し、経営が破綻する。小さなクレームから食中毒事故のような大きなケースまで食の安全確保、品質維持を怠った農業経営体は持続できない。最優先事項であり、これはできて当たり前の事項である。しかし今までの日本の農業経営体はこれをどの程度の基準で満たしてきたのだろうか? その基準は消費者、購買者がみて納得するものであったのだろうか? GAPはこれら暗黙知であった基準を明確にし、それを維持向上させていくことができる。

次節に続く…

 

 

 

Pocket