2018年2月16日日本橋にて、農業経営支援連絡協議会発足記念シンポジウム「GAPをすることの農業経営上の意義、メリットを考える」へ参加して、実際の農業法人での取得について考察する。
前節に続いて…
■ GAP取得の農業経営上の意義
今日本の農業経営者に求められているものはますます高度化している。大規模農場運営に複数の従業員のマネジメント。生産計画から販売計画に至るまでの経営戦略。資金調達、設備投資、リスク管理等、過去30年農業経営者が経営してきたことが参考にならないほど複雑かつ、新しい発想が求められるている。
そのような中で大きく変化するマクロ環境に対してどのように自分たちの農業経営を持続させていくのか?
これらを網羅的かつ効率的に行うための枠組みの一つとしてGAP制度がある。
GAP制度の4つの目的意義
- 食の安全の確保
- 環境保全型農業の取り組み
- 農業生産者の労働安全の確保
- 効率な農業管理体制の実現
参考サイト 日本GAP協会HP http://jgap.jp/navi_01/index.html
④ 効率な農業管理体制の実現
「効率的な農業管理」の点が今まで見てきた中で最も改善の余地があり、またITなどの活用により、より目に見える形として効果を発揮しやすい。
まずは効率的な農業管理の目的と定義を一緒に考えていきたい。効率的な農場管理とはそもそもどういったものだろうか? そのイメージは?
ー 農作業が無駄なく緻密に計算されており経営資源が効率的に使われている⁉
ー 作業計画や結果、販売管理などが書面やデータなどで見える化されている⁉
ー 生産から販売までPDCAが機能し、品質の管理や経営管理が常に改善している!?
様々なことがイメージできるが、一般的な内容としては農業の経営資源(ヒト、モノ、カネ)が効率的に使われていることや、トレサビリティ確保のための書面上の管理がしっかりされていること、またそれを支えるための人材育成を含めたPDCAが成り立っていることではないであろうか?
では、これらを踏まえて現状の農業法人の抱えている課題はというと…
〇 経営農地の大規模化及び広域化
〇 短期、長期含めた従業員の増加による経営管理の複雑化、高度化
〇 遊休資産の増加(繁忙期、閑散期の労働量のばらつきの拡大、農業設備の遊休時間の増大 等)
〇 クレームの発生、同じような事故の発生、品質低下
家族単位での農業が特徴であった日本の農業は、人口減少、高齢化など様々な外部要因のより大きな転換点を迎えつつある。農業が産業化し、経営規模が拡大し、農業の経営管理が複雑化している。
今までは家族のあうんの呼吸で出来ていたことが外部の人材の登用や、地域ぐるみで法人化などにより大多数の人たちによる共同作業、分担作業が発生してくる場合、勘や長年の経験だけでは事業が成り立たなくなっていく。数字に裏付けされた論理的な事業展開(作業、労働分配、品質管理、販売管理)が必要である。
これらを解決していく一つの方法がGAPの利用である。効率的な農場管理を実現するための基準がGAPであり、またその基準を実際の作業工程に落としてこんでいくためのツールがITである。
ITを導入すれば自動的に農場管理が適切にそして効率化されるわけでない。
事務担当が一人淡々と農作業を記録し、帳簿を作成し、販売先の資料をファイリングすることが効率的な管理のすべてではない。農場運営に携わる経営者、従業員、外部委託者含めて全体が、経営目標の共有とそのためのコスト管理、無駄を省くPDCA(計画、実践、検証、改善)を運用し、より経営的に筋肉質になっていくための一連の流れ、仕組みの確立こそが効率的な農場管理の理想の形である。
自社で管理基準を定めるには膨大な時間と労力が要する。標準的な基準であるGAPの管理項目をベースに自社の農場に合わせて効率的な農場管理を図ることがより簡潔にそして網羅的に始めるための第一歩となる。
PS. 弊社ではJGAP指導員が2名在籍し、5年以上の指導実績を有しているので、いつでもご相談可能です。