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お米の価格は誰が決めているのか?①

ー お米のサプライチェーン上のプライシングパワー(価格決定力)の考察 -

「今年の概算価格は1俵・・・円!」「米価の下落が続く」はたまた「米価が高騰」

こんな見出しが稲刈りシーズンを迎えた産地で新聞などの見出しを飾る。通常各産地の農協の概算価格が決まり、それにつられて民間市場の取引が形成されていく。

契約栽培やJAS有機、受賞米などのブランド米市場は事前の播種前契約で価格が決定されるが、大部分のお米の市場価格は市場のプライシングリーダーである全農の相対取引価格がベースとなる。

コメ農家はいままでいったいいくらで売れるかどうかもわからないものを作ってきた。その年その年の価格に一喜一憂、ギャンブルにも似た農業経営がされてきた。米価が高く、農家が十分な利益を残せる間はそれでもよかったが、需要が減退し米価が長期的な低迷に入っている昨今はそのままでは難しい。

お米は政治的な影響力を最も受ける作物である。日本人の主食のためその価格形成や生産量は長らく食管法によって守られてきた。だがこれから市場は確実に規制緩和、自由市場に移行しつつある。

政治的恣意的にゆがめられた価格が需要と供給のバランスという市場原理によって訂正されていく。

最大のプライシングパワーである全農でさえ、市場原理には太刀打ちできない。市場の需要を無視した生産過多は価格の暴落を招くし、逆に生産縮小し価格を上げると需要が追い付てこない。やはり市場価格は需給のマッチングポイントに修正されていく。

今後の日本の農業の担い手である大規模農家、農業生産法人はある程度の数量のコメを生産するため市場価格の影響を受けざる負えない。

一部の高級米やブランド米を除いてやはりコメはコモディティ商品である。主食が故に市場の規模は大きく、価格決定権は市場に委ねられる。

では、具体的に市場の誰が決めているのだろうか?

サプライチェーン上の川下に位置する外食産業や小売業界が優位なのだろうか? もしくは彼らに見積もり提案する卸商社であろうか? 生産者や農協から買い付ける中間流通業が長らく市場価格の調整の役割を担ってきたが、ネット販売などの産地直送が増え、小売、外食の川下産業が産地からの直接買い付けなどを強化している。経営学的には市場は垂直統合化に向かっていると推察される。

次節に続く…

 

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