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将来の日本のお米市場は供給過多?需給逼迫?

平成30年1月に農業経営支援連絡協議会主催のトップセミナーが開催された。行政、農業者、支援金融機関等が集まり日本の農業の将来性について討論する会議だ。その中の基調講演で宮城大学の大泉教授より興味深いデータが提示された。

・2015年138万戸の農業経営体は2030年に40万戸へ

 年6万戸減 今後15年で3分の1に減少

・2015年95.2万戸の稲作農家は2030年に10.7万戸へ

 年6万戸減 今後15年で6分の1に減少

・2015年209.7万人の農業就業人口は2030年に53.8万人へ

 現在の就業人口が4分の1に減少

客観的にみれば日本の農業は衰退するように思われる。データ発表時点が2015年なので、2019年の現在はすでに推定期間の3分の1を過ぎているためこの数字の推移予想は大方的を得ている。

ただ、もし農業全体の算出額が8兆円台をキープしたまま上記の構造変換が起こるとしたら、産業全体の効率化、生産性はむしろ上がっていると思われる。

1経営あたりの耕作面積が増えが、生産規模、経営規模が拡大しているとすれば日本の農業生産性は向上しているともいえる。

日本のお米の総生産量800万トンを100万戸の農家で作っていたとして1戸あたり8tの生産量である。需要が年8万トン減少し2030年時点で700万トン前後とした場合、稲作農家戸数は10万戸なので、1戸あたりの生産量は70tになる。

客観的にみれば稲作農家の生産性は9倍近くに伸びており、劇的な向上だ。これだけ生産性が改善される産業が他にあるだろうか? いや、むしろよくいままでこれほど生産性の悪いことをしていたのか、とさえ考えられる。農業の多面的な機能、価値を考えれば致し方ないことであると思われるが、稲作農家の生産性は劇的に向上している。

さらに事業拡大旺盛な篤農家からすれば、生産する競合農家が消え、生産力が増大するためむしろ事業環境は好転しているように感じる。

いまや1経営でお米の出荷量は500tを超えるような大規模生産法人も出現している。

これらの大規模法人は直接販売、ネット販売等を駆使し、農協等の流通を頼らずに独自の営業ルートを開拓し、中間流通業者、小売業者の事業領域を侵食している。

総じて日本国内のお米市場は毎年1%ぜつ市場が縮小しているが、稲作農家の数はそれを上回る毎年7%前後で減少しており、反比例して1経営体の生産量は10%以上の伸びを記録している。いうまでもなく川上の稲作農家の価格決定権は徐々に改善、向上している。お米のサプライチェーン上のパワーバランスが変化しているのだ。

生産者と小売り外食企業などの結びつきが強くなればなるほど(つまり業界の垂直統合度が高まれば)、市場価格の決定はより需給を反映したものになるはずである。

稲作農家の減少率が鈍化し、お米の需要減率がそれを上回っている状態ではお米の供給は過剰の状態に入りやすく、逆に減少率が需要減率が上回っている状態ではむしろ需給はひっ迫しやすい状態であるといえる。

現在は薄氷の上で、需給が均衡しているように見える。無論、海外輸出などの外需の開拓による生産量の増大、天候による生産量の増減の他様々な外部要因を鑑みなければならないが農業、特に稲作農業の産業内部は今後5年~10年で劇的な変化に直面しているといえる。

これらの事業脅威と機会を新しい農業経営者は捉えていかなければならない。

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