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減反政策の廃止と平成30年以降のコメ価格の行方 

平成30年より国の生産調整目標の設定、いわゆる減反政策が終了する。戦後の食糧管理法から続く国の「作らない」ことに補助金を出す制度がその役目を終えるのだ。JAや県の担当者は(農業再生協議会なる?)全国組織を作り自主的な作付け目標を設定して米価の維持のため生産調整を目指すとのことだが、これだけコメの自主流通(いわゆる卸売市場またはJAを通さない)が増えている中で、その効果ははなはだ疑問に思われる。過剰作付けをすれば当然生産物の価格は下がる。だが平成27年から底を打ち、3年連続で価格上昇を続ける米価は適正価格なのだろうか? 

農家にしてみれば答えはYESだろう。平均年齢70歳を超えるコメづくり農家は1俵2万円の時代を過ごしてきた。今は1万5千円程度。一時は1万円近くなったことを考えれば適正だ!と言わんばかりの強気な姿勢である。だが市場価格の決定は本来需要と供給の交差する点である。供給減、需要増であれば価格は上昇する。反対に供給増、需要減であれば価格は下落する。この純粋な市場原理によらない(いわゆる不完全市場下での)、政策目標などの政治的介入、市場のビックプレイヤー(全農JA、大手卸)による価格指標の設定が適正価格を歪めている感は否めない。しかし需要供給による市場原理はいつもこの歪められた価格を適正に戻そうとする力が働く。

民間期末在庫の減少、飼料米作付け増加による主食用米の減少、生産農家の高齢化と耕作放棄地の増加。これらどれをとっても米価の価格が大きく下落する要素は見当たらない。しかし国やシンクタンクが発表しているように日本にはありまってコメを生産できるだけの資本財がある。個人零細農家の高齢化と反比例するように地域の営農組織の法人化、そして大規模農業法人の成長が市場の効率性を維持している。個人零細農家によるコメの生産量の減を大規模農業法人がより効率の高い生産方式で吸収し、生産量を維持している。市場はますます効率化している。日本の農業の生産性は低い(他産業と比べて)と言わることが多いが、それでも世界的にはかなり高い割合で向上している。最新鋭の農業機械、農業ITなどを導入できる国は世界でそんなに多いわけではない。

しかるに今の日本のコメ市場及びコメ価格は生産市場(農業法人等)の効率性の伸びという上昇曲線と国内市場の人口減少による需要減少という下落曲線の交差点の上に絶妙なバランスをとっているように思える。注目してほしいのは生産量(供給量)が指標軸とならないということだ。生産量はある意味自由にコントロールできる。方法論やその後の影響を無視し、日本がその気になれば現状800万トン未満の生産量を1000万トンぐらいにはすぐに上げることができるだろう。それだけの資本財が長年蓄積されている。でもそれを価格維持や政策目標等の理由により市場の需要に合わせるている(またはそれが可能)ということは生産量は米価の市場価格形成の要因としてはもはや効力を失っている。むしろ生産量をコントロールできる効率性が価格形成の支配的要因になりつつあると考えらる。

農業人口の高齢化と減少による生産量の低下要因と大規模化による生産効率の上昇要因がどうようなバランスになるのか? そしてそのバランスがどのように需給曲線に反映されるかが、今後のコメの価格の動向の鍵になると考えられる。

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