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商品が良ければ売れるのか?②

続き…

~ 品質至上思考とマーケティング視点のずれ ~

「農家、生産者の売りたいものと消費者のほしいもの、買いたいものはいつも同じではない」

当たり前のことのように小売業者、流通業者は思うだろう。しかし農家、生産者はいまいちピンと来ないかもしれない。現在日本の農業を支えている世代は昭和10年、20年生まれの60代、70代である。戦後生まれの「ものがない」時代に幼少期を過ごしているため「不足感」が心情的にずっとあるのだろう。またバブル期は1俵60㎏2万円でお米を販売していたためどんぶり勘定でも潤っていた。

しかし時代は移り変わっている。

今は「モノ余り」の時代である。供給量が需要を大幅に超えている(もしくは超えることができる)。消費者は昔よりも多くの選択肢をもつことができている。食生活も変化し、自宅で大家族で食卓を囲んだ日は過ぎ去りつつあり、コンビニなどの中食、外食で済ませている人が多くなってきている。

この食生活の変化により求めらているお米も変化している。ここ2~3年は米価が上昇し、低価格帯の業務用米が不足していると報道されている。にもかかわらずコメの供給源は、自治体と一緒になり高級ブランド米の開発PRに勤しんでいる。

日本人は「ものづくり」が物語るように職人気質の人が多い。農家も一国一城の主として周りの人と一緒に組織でコメ作りをするよりも「最高品質」を目指し、個人の栽培技術を磨き、家族経営が中心となってきた。各種のコメの品評会で金賞、特賞が表彰されている。

でもその日本人の気質、伝統のよいところが時代の変化とともに時代にマッチしなくなってきていると感じるのは私だけだろうか?

規模を追わず、最高品質を求めてニッチな富裕層、百貨店の外商向けの商品などマーケティングを展開していくなら現在の方法はマッチしている。しかしそれは生産コスト以上に、販売コストがかかる。きれいな米袋、化粧箱、付随の生産者のストーリーを伝えるパンフレット、ホームページ、展示商談会への出展、営業にかかる費用を生産者、農家はイメージできているだろうか?

需要の大部分を担う主食用米、量販店向け、外食向けは一般大衆向けのためそれほど差別化されなくても売れる。営業の場では、細かな品質よりも価格が重視される。つい先日参加してきた「米マッチングフェア2018」@東京会場であるバイヤーに言われたことがある。

「業務用米のマッチングフェアって聞いたので来ましたけど、各産地、農家さん品質やブランド米ばかり宣伝していてちょっとニーズが違うかなって思いました。」と…

マーケットセグメント(顧客層)により求められる品質はまた違う。セグメント別に販売チャネル、宣伝方法、営業手法も違う。

売り先も考えず農協にできたものを出していればいい時代は過ぎつつある。

農家、生産者は二者択一の岐路に立っている。

「最高品質」の生産を求め、ニッチなマーケティングを展開するのか、

規模の拡大を狙い生産効率重視のマスマーケティングを狙うのか。

いずれにせよ「生産」をマーケティングの視点からも考察しなければならない時代となりつつある。

 

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