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アフターコロナのお米需要の行方

はじめにコロナの影響により被害を受けた方々に心からのお悔やみを申し上げます。弊社も取引先飲食店の売上急減により、同じく売上減少となっており苦しい状況ですが、主食供給者としてその社会的責任を全うしていきたと思っております。

2020年3月頃より日本国内でも本格的に流行したコロナにより外食産業は軒並み、売上が急減。4月、5月はさらに影響度が加速し自粛要請により休業を余儀なくされた店舗も多く、多くの食材が行き場を失い廃棄または在庫処分となっている。お米の市場はもともと年はじめから徐々に値を崩していたのが、春先にその下落幅が加速、暴落状態となっている。令和元年秋田産あきたこまちに限って言えば、年を越す前は1俵60㎏・置場14200円前後で推移していたものが、4月の下旬には13300円前後となってしまっている。ちなみに元年産の農協の概算金価格が13100円前後だったため、簡単に言えば中間業者は利益ゼロ状態であり、物流費、保管経費等を勘定すれば間違いなく赤字である。

ほとんどの生産者、米農家は秋口にお米を卸業者に販売し終わっているため影響は少ないとみられるが、中間流通業者である集荷業者や卸、JAなどは元年産においては大幅な赤字になることは避けられない状況。

あーよかった。等と農家も言っていられない。今年の営業不振、需要減はそのまま令和2年産の新米価格に直結するからだ。農林水産省の試算では、現在少子高齢化による人口減少、食生活の変化により年間10万トンのお米需要が消えている。そんな中で今回のコロナである。オリンピック需要を見込んで食品市場も盛り上がっていたが、意気消沈といった状況である。

3月下旬から4月上旬に一部スーパーマーケットで、お米が品薄になるということがあったが、反動で4月下旬からは売上があまり伸びず、一般消費者の方が見るほどお米業界は浮足立っていない。

お米市場をミクロ的に観察すれば、業務用のブレンド米や安いお米の在庫が積み上がり、スーパーマーケットなどの量販店で販売されている有名銘柄が若干売れていたかに見えた。しかし瞬間的な需要増はあったものの全体的には市場はやはり停滞しているといえる。主食であるゆえ、需要がゼロになることはないが、大幅な増加も見込めない中では、川上に位置する農家、生産者は新しい販売戦略を検討していかなければならない。

年配の農家から言わせれば、こんなことは過去に何度もあったし、お米は高くも安くもなるから一喜一憂していてても仕方ないということだろう。

しかし状況は変わってきている。農家、特にお米農家は大規模化し、家族経営から企業経営に変貌し始めている。企業は継続的に利益を上げなければならない。今年は大幅な赤字で資金ショートだから来年頑張りましょうというわけにいかない。資金ショート=倒産である。

市場価格の乱降下に左右される販売戦略から安定した売上をあげる販売戦略へ転換していかなければならない。概して「ギャンブル的な利益を求めず、損をしない経営」である。大きく儲ける可能性があるが、大きく損をする可能性があるリスクが高い販売手法を改め、もしくは縮小し、大きく損をしない販売への転換が今求められている。

米価は流動性が高い。その時世の需給により乱降下する。それを見極めるのは至難の業である。その流動性をいかに緩和し、安定的な売上を作っていくのか、市場の影響に左右されない柔軟な発想と取引形態が求めれらる。

弊社は今までそのような考え方のもと、従来の取引形態、手法、固定概念に捉われず、新しいサプライチェーンの構築に取り組んできた。完成したわけではないし、完璧なわけではない。ただ取引先の分散化以上に、「キャッシュフロー視点の取引形態の多様化」を目指している。

与信管理の延長線上にある取引の分散化だけでは、取引価格の分散化、平準化にはならない。同じ取引契約形態(簡単に言えば、秋口に農協の価格に合わせて販売する手法)では市場の影響を受けるためリスクは分散しない。解決のひとつの方法は固定価格での複数年取引(契約栽培)である。ただしそれをなすためには取引先との信頼関係の構築、物流施設の整備等が必要であるし、生産体制をしっかりと構築する必要がある。

弊社はさらに一歩進んで川下企業である外食企業との共同生産やお米の生産業務を農作業の受託業務に切り替え、取引形態を多様化している。お米を売ることをやめ、農作業を請負っているのである。

これらの複数の取引形態を組み合わせ全体として最適な販売のポートフォリオ(分散化)を構築しようとしている。

一見損をしているように見えて、このような危機においても生き残っていく戦略を模索している。大きく儲ける経営から、大きく損をしない経営へ。真価はまさにこのような危機の状況の中に見出される。

販売に困っている、今後の新たな販売方法を模索している方はぜひご一報いただきたい。

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